Aaron Venture「Infinite Woodwinds」のレビューです。
数少ない木管ライブラリであり、幅広い楽器をカバーしています。
インストール容量が少なめで動作が軽い
インストール容量は12.3GBで、パッチひとつあたり60KBで読み込み、メモリは30MB消費します。
そのため、起動が速く、動作が軽いです。
ノートパソコンでも快適に動作し、ユーザーフレンドリー。
気軽に音源を立ち上げられることは正義です。
大容量=高音質とは限りませんし、コンパクトにまとまった完成度の高いプラグインだと思います。
29の木管楽器を収録
インストール容量はコンパクトながら、29の木管楽器を収録しています。
オーケストラの構成であるフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットはもちろん、サックスまであります。
それもサックスはSATB網羅しています。すごい。
S:Soprano(ソプラノ)
A:Alto(アルト)
T:Tenor(テナー)
B:Baritone(バリトン)
そのため、吹奏楽向けの構成となっています。
木管楽器はリリースしているデベロッパーが少ないため、嬉しい仕様です。
息遣いが伝わる優しい音色
リードから息遣いが伝わる優しい音色を奏でてくれます。
ささやくような、透き通った音色です。
高音の繊細さ、低音の大胆さも兼ね揃えています。
全体的に大人しいので、ミックスすると音量が控えめ。
サックスはレンジが広いので、他楽器の音域をマスキングしないように注意しましょう。
マスキング:他の音が聴こえずらくなる現象。上書き。
スマートレガートモードで滑らかな演奏
音符の速さ、長さで自動的に認識される「スマートレガート」を搭載しています。
その要素はランダムに生成されるため、毎回微妙に異なるニュアンスで発音します。
そのためベタ打ちでも、midiノートを解釈して違和感なく演奏してくれます。
また、「レガートバイパス」モードが存在します。
これをONにすると「スマートレガート」機能なしで発音します。
滑らかな音の繋がりがなくなるので、ショートなどに向いています。
さらに、和音で鳴らすことができるため、スケッチに適したモードです。
スケッチ:大まかに描写すること。曲の下書き。
操作しやすいリバーブ、ポジション、マイク、コントロール
UI画面には操作しやすく各機能が配置されています。
3つのリバーブ
小規模(0.5秒)、中規模(0.9秒)、大規模(1.5秒)の空間系が存在します。
スタジオ向けのドライ、ホール向けのウェットなど残響を変えることができます。
単独で演奏するときはもちろん、他の楽器と混ぜる場合も、簡単に統一することができます。
0-127で変更するパラメータはないので注意。
座席の位置を指定できる
DAWのMIX画面でパンを設定することなく、プラグイン側で細かく配置を変更できます。
音源をロードすると基本の座席に位置します。
音が干渉する場合はずらしてみましょう。
3つのマイク
「クローズ」「メイン」「アンビエント」の音量をミックスまたは独立してコントロールできます。
プリセットも5つ用意されているので、統一性を確保できます。
把握しやすいコントロール
主要な奏法が画面に表示され、リアルタイムで変化の様子を捉えることができます。
CC#1 | ダイナミクス(抑揚) |
CC#16 | フラッター(振動する音) |
CC#17 | グロウル(歪んだ音) |
CC#20 | ビブラート速度 |
CC#21 | ビブラート深さ |
CC#64 | レガートバイパス(スケッチモード) |
マウスで右クリックするとCC#も表示されるので、いつでも確認できます。
Kontakt有料版が必要
再生エンジンにはNative Instruments「Kontakt」を採用しています。
バージョン5.7以降のKontakt Fullが必要です。
Kontakt有料版が必要なので、所持していなければ追加費用を負担することになります。
キースイッチが存在しない
レガート、スタッカート、トリルなど奏法を切り替えるキースイッチが存在しません。
前後の音の繋がり、ベロシティ、コントロールチェンジを駆使して打ち込む必要があります。
基本となる「スマートレガート」を深く理解し、挙動を把握しなければなりません。
木管楽器は繊細なレガートを任せることが多いため、困る場面は少ないかもしれません。
それでも、スタッカートなども打ち込みで表現しなければならないため、やや難しいです。
終わりに
Aaron Venture「Infinite Woodwinds」のレビューでした。
オーケストラと吹奏楽向けの楽器を多数収録しており、その品質も高いです。
読み込みが速く、動作も軽いため、制作に集中できます。
キースイッチがないので、打ち込みはやや独特です。
管楽器は(リアルで)演奏が難しいので、貴重なライブラリでもあります。
気になった方は、公式のデモを聴いてみてください。