DTMのキースイッチについて解説します。
キースイッチとは、奏法の指定を指します。
奏法
楽器の発声・演奏の方法。
アーティキュレーションとも。
このキースイッチを用いれば、ひとつのトラックで様々な奏法を切り替えることができます。
奏法が豊富なヴァイオリンを例に説明します。
ヴァイオリンの音域と奏法
まず、ヴァイオリンの音域と奏法について、Audiobro「LA Scoring Strings 3」を例に説明します。
音域はG2からD#6まで。
奏法は6つ収録されています。
レガート | 繋げた音 |
ショート | 短い音 |
ピチカート | 指で弦をはじく音 |
トレモロ | 連続した同じ音 |
トリル | 連続した2つの音 |
ハーモニクス | 倍音の高音 |
音域は水色、キースイッチは青色で判別できるようになっています。
このように、楽器の音域以外の鍵盤にキースイッチが割り当てられています。
多くの場合、低音部にキースイッチが割り当てられています。
キースイッチの使い方
奏法「レガート」でメロディ「ド」を鳴らしたい場合、キースイッチの「レガート」を打鍵したまま「ド」を打鍵します。
「レガート」を打鍵している限り、メロディを変えても「レガート」で演奏されます。
途中で「ピチカート」で演奏したい場合は、「レガート」を離鍵し「ピチカート」を打鍵したまま演奏します。
多くの場合、デフォルトは「レガート(サスティン)」が設定されています。
キースイッチを指定しなければ「レガート(サスティン)」で演奏されます。
しかし、途中でキースイッチを切り替えた場合はこの限りではありません。
打ち込んだmidiノートを見てみましょう。
メロディとキースイッチは同じ画面に表示されます。
「レガート」から「ピチカート」に奏法が変化する場合は、次のようになります。
青色の矢印間は「レガート」、赤色の矢印間は「ピチカート」で演奏する指示になっています。
キースイッチのメリット
通常、DTMでは楽器ごとにトラックを作成します。
奏法が違えば、同じ音源でも奏法の数だけトラックを作成する必要があります。
しかし、キースイッチ対応のプラグインであれば、ひとつのトラックで完結することもできます。
↓
メリット① 複雑な奏法をかんたんに打ち込みできる
midiノートで細かく書き込まなくても、キースイッチひとつで奏法を再現できます。
例えばトリルの場合、「ドレドレドレ」と打ち込む必要がありますが、キースイッチを指定すると「ド」だけで「ドレドレドレ」と発音してくれます。
↓
特殊なSE(サウンドエフェクト)音が収録されている場合は、midiノートの打ち込みでは不可能な音色を再生してくれます。
メリット② トラックの管理が楽になる
奏法の異なる複数のトラックをひとつにまとめることができると、管理が楽になります。
同じ音源でトラック名が「Violin 1」から「Violin 100」まであると、あとで混乱します。
DAWによっては、複数のトラックをひとつのフォルダにまとめる機能もあります。
メリット③ ミックスが容易になる
トラック数が100と10とでは、10の方が音量バランスを取りやすいです。
ミックスの工程が少なくなれば、それだけ早く完成に近づきます。
奏法で音量が変わることも多いです。
別トラックを設けて、ミキサーで整えた方が効率的なことも。
メリット④ パソコンの負荷を抑えることができる
トラック数が少なくなれば、それだけ読み込む楽器・エフェクトが少なくなるので、パソコンの負荷を抑えることができます。
制作中のフリーズ、クラッシュを防ぐことに繋がります。
ソングデータの書き出しが速くなることも。
キースイッチのデメリット
キースイッチのデメリットとして、楽器に対する深い知識が必要です。
慣れ親しんでいる楽器ならば、様々な奏法があることは身についているでしょう。
しかし、キースイッチは多様な種類があります。
その種類を確認・勉強するだけでも、時間を要します。
- ブリッジミュート
- スライド
- チョーキング
- ハンマリングオン
- プリングオフ
- ピッキングハーモニクスなど
打ち込みの手間がかかる
奏法の切り替えタイミングを、キースイッチで指示する必要があります。
メロディを打ち込んだあとに、キースイッチを手打ちして調整する手間がかかります。
メロディとキースイッチをリアルタイムで打ち込めると早いですが、難易度が高いです。
制作中、曲の途中から再生するとキースイッチが反映されないことがある
制作中に再生すると、タイミングによっては、キースイッチを読み込まず再生が進みます。
次のキースイッチを参照するまで、どの奏法が選ばれるか不明です。
多くの場合、最後に読み込んだ奏法 or デフォルトが選ばれます。
奏法別にトラックを作成すると、この問題は起きません。
キースイッチの注意点
キースイッチは、メロディの直前に指定すると正確に反映されます。
メロディと同じタイミングの場合、反映されないことが多いので注意。
終わりに
DTMのキースイッチについて解説しました。
キースイッチとは奏法を指定することです。
また、曲中に奏法を切り替えたい場合に指示する信号です。
上手に使い分け、制作しましょう。